このたびAASでは、勝盛英梨香・貴志真生也・森 伊織3人展『鼻向け』を開催いたします。

本展では、身近な日用品や工事現場で見られるような素材を独自の文脈で組み変えることによって作品化してきた貴志真生也、自身の身体的体験をもとに観賞者へ認識と感覚のズレを提示する森伊織、伝統と現代人の日常生活との融合を目指す活動を、華道を通して積極的に行う勝盛英梨香の3人が、AAS の空間を大胆に使用したインスタレーションを展開します。
日常に溢れるズレ。作家によって書き変えられた一見非脈絡的にも見える空間のなかで、勝盛によって毎週生け換えられる「おはな」が、そっと鑑賞者の指針を示すことでしょう。
どうぞこの機会に、ぜひ皆様にご高覧いただけましたら幸いです。
【展覧会によせて】
早いもので、AASのオープンから2年の月日が経とうとしています。この2年間は、AntennaとAAS、双方の活動を通して、人と作品の関係、それらをつなぐ社会との関わり方について深く考えるとても良い機会となりました。
Antennaは、一作家として作品をつくることに加え、見せる場を創造し始めたことで、たくさんのことを学びました。AASで出会った多くのアーティスト、暖かく見守ってくださった地域の方々、そして京都近郊から、あるいは遠路はるばる足を運んでくださった皆さま方に支えられ、今日まで活動を続けてくることができました。長い間、多くの方々のお世話になり、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
また、これまでAASの活動を継続してこれたのは、アシスタントの旭が始終運営を支えてきてくれたおかげです。学生の身でありながら、ひとつひとつの展覧会に真剣に取り組み、多くの成果を残してこれたのではないかと思います。
そこで、AAS休止前の最後となる展覧会の企画は、すべて旭に任せることにいたしました。より若い世代の自由な発想によって指し示されるアートのかたちに、未来の可能性や希望を感じていただければ幸いです。
Antenna
田中英行 市村恵介 古川きくみ
アシスタントを務めたこの2年間、AAS では15 つの展覧会を開催しました。AAS は屋根も壁もトタン一枚の繊維工場跡で、季節や時間によって気温や湿度が大きく変化します。開催する時期によっては、作品にも影響が多々みられました。通常のスペースではあってはならないことかもしれませんが、このような条件の中でも空間と作家がうまく均衡を保てるようにと、及ばずながらもできる限りのお手伝いをしてきました。また、住宅地の一角にあり、周辺の環境もスペースの雰囲気に大きく影響がありました。静かで穏やかで、そしてどこか人の気配のする温かな地域性は、外観にも内観にも良い空気感を与えていたのではないかと思います。奇しくもAASの休止前、最後となった今回の展覧会では、このようなさまざまな条件から生まれたAAS の空気感を最大限に活かせるものにしたいと思いました。
今回のタイトルともなった「鼻向け」は通常「餞」と書かれますが、遠方に旅立つ際に馬の鼻先を行き先の方向に向けた習慣からできた言葉です。そこには、汎用されている「はなむけ」という響きから受ける別れの印象とは少し違い、ポジティブな意味合いが込められています。本展では、この「鼻向け」という言葉のように、3人の作家が向かおうとする行く先を示すことによって、観る人にもこれから先への期待感や希望を与えてくれることを願っています。
最後になりましたが、AASにご協力、ご来場くださった皆さま、本当にありがとうございました。
企画/旭 藍子 (Antenna アシスタント)
勝盛英梨香・貴志真生也・森 伊織3人展『鼻向け』
会  期 : 2010 年5月15 日(土)~ 5月30 日(日)11:00 ~ 20:00
     ※開廊日:会期中の金、土、日(5/15、16、21、22、23、28、29、30)
     ※オープニングレセプション:5/15(土)18:00 ~ 21:00
      (food 協力:森林食堂)
会  場 : AAS 京都市西京区川島粟田町18-23
出展作家:勝盛英梨香、貴志真生也、森 伊織
企  画:旭 藍子、森川阿沙子
問 合 せ : E-mail aas(a)antennakyoto.com ※ (a)→@に変えて送信してください。
      Tel/fax 075-381-1189