このたびAASでは、外詩作家の佐倉密とAntennaの古川きくみによる企画展覧会『宇宙民藝』を開催いたします。


佐倉密は現代美術のコレクターであり、詩と視覚による詩的オブジェ「外詩」を試みる外詩作家でもあります。作品をコレクションするのみでなく、自らも様々な分野の作家とコラボレーションしながら作品発表を続けており、カテゴライズされることのない詩的でユーモラスな作品の数々を生み出してきました。
古川きくみは現在、京都市立芸術大学大学院博士(後期)課程に在籍しており、環境デザインの領域において、建築を含めた美術を取り巻く環境空間について研究しています。また、Antennaのメンバーとしても作家活動を行っており、近年ではエキシビジョンデザインも手がけるなど、その活動の幅を広げつつあります。
本展は、多種多様な作品を展開する約20名の若手アーティストによって制作された掌ほどの大きさの作品によって構成されます。佐倉の紡ぎ出した『宇宙民藝』という言葉をテーマに、作家達はささやかな宇宙観を創出し、古川によってAASの空間に散りばめられます。それらは観賞者それぞれの心に広がる小宇宙を巡る旅へと導いてくれることでしょう。
今回は、Antennaに加えて、メンバーの市村恵介、田中英行がそれぞれ個人作家としても出品いたします。
どうぞこの機会に、ぜひ皆様にご高覧いただけましたら幸いです。

『宇宙民藝』
会  期:2010年4月10日(土)〜 4月25日(日)11:00〜19:00
*開館日 会期中の土日のみ( 4/10, 11, 17, 18, 24, 25 )
*4月10日(土)
15:00〜 トークセッション
17:00〜 オープニングレセプション
food協力 / torch
*4月25日(日)
17:00〜 クロージングライブ AWAYAによるパフォーマンス
food協力 / torch
*初日、最終日は、出品作家によるケータリング(出張料理)を行います。
会  場:AAS (Antenna Art Space)京都市西京区川島粟田町18-23
問 合 せ : aas(a)antennakyoto.com ※ (a)→@に変えて送信してください。
企  画:佐倉密、古川きくみ
出展作家:Akashic Universe、旭藍子、AWAYA、Antenna、市村恵介、糸川知佐、おかひろし、神山飛鳥、鬼頭祈、小鐡裕子、小林真依、鈴木宏樹、田中英行、谷澤紗和子、つつみ千寿、寺田就子、福森創、森川阿沙子、矢津吉隆、山下耕平、山本祐理子


わたしは、コレクター佐倉密さんの依頼で、佐倉さんのコレクションである宇宙民藝品を収蔵・展示するスペース宇宙民藝館を設計しました。ところが、預かっていた品々が盗難に遭い、そのすべてを失ってしまったのです。わたしは佐倉さんに謝罪し、若手アーティストによる宇宙民藝品の再現を提案しました。現代アートもコレクションの対象とする佐倉さんは、それをゆるしてくれました…。さて、本展覧会でみなさんにご覧いただく作品は、出来立てほやほやの著作物ですが、しだいに時に溶かされて、しかし消滅することなく、贋物がいつしか本物の民藝品になる、なんてことはないかしら。
古川きくみ

はじめはびっくりして、嫌いな警察に届けようと思ったりもしました。でも、奇特なひともいるものだなあ、と変にありがたい気持ちも湧いてきたりして、結局、現代アートでの再現の件も含めて、これでよかったのだと考えるようになりました。泥棒に入られ、宇宙民藝品はこの世から消えてなくなりました。すべての宇宙民藝品を、わたしは信州のとある骨董店で求めました。宇宙民藝品などというものは、もともとあったものではありません。骨董店の主人が“発見”したものです。髯の白い主人はたいへんな目利きで、その世界では神様のような存在でした。さきほど、宇宙民藝品がこの世から消滅したと書いたのは、四年前に骨董店の主人が亡くなったからです。それに、泥棒がそれらを宇宙民藝品と知って盗んだとは、到底考えられませんから。時が経つにつれ、あの泥棒のことが、不思議と天使に思えてくるのは何故だろう。
佐倉密